司祭の言葉 3/2

年間第8主日 ルカ6:39-45

父と子と聖霊のみ名によって。 アーメン。

今日の福音のような主イエスのおことばの前に、わたしたちは祈る他なすすべがありません。しかし、祈るとは、わたしたちにとっていかなることなのでしょうか。

ルカによる福音において、わたしたちは後に、主イエスから、主ご自身の祈りである「主の祈り」(ルカ11:1-4)をいただきます。使徒パウロは、「祈り」について、「わたしたちはどう祈るべきかを知りませんが、「聖霊」自らが、言葉に表せないうめきをもって(わたしたちを神に)執り成してくださる」(ローマ8:26)と語っています。

そうであれば、主イエスからいただく「主の祈り」を祈ること、それは「うめきをもってわたしたちを神に執り成してくださる「聖霊」」を求めさせていただくことです。このことは、ミサにお集まりの皆さんは、すでに良くご存知ではないでしょうか。

「主の祈り」は、古来、とりわけミサの中で大切に祈られて来ました。しかも、「主の祈り」は『感謝の典礼』に続く、「ご聖体拝領」に極まる主イエスとの『交わりの儀』の冒頭に祈られてきました。明らかに「主の祈り」は、聖別の祈りを経て、ご聖体における「現存」の主のみ前に、「ご聖体の拝領」を目指して祈られています

ここで、「ご聖体」を拝領することは、ご復活の主のいのち・生ける主イエスご自身をわたしたちの命としていただくことです。それは、活ける主のいのちである「聖霊」を、わたしたちが受けることに他なりません。この「聖霊」を求める祈りとして、主のみことばに従って、ミサの中で「主の祈り」は祈られて来ました。

今、「主イエスのみことばに従って」と申しました。実は今日の福音で「主の祈り」をわたしたちにお与えくださった主ご自身がそのことをはっきりと仰せでした。

主イエスは、「わたしは言っておく。求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる」(ルカ11:9-10)と仰せの上で、「主の祈り」を祈るわたしたちに次のように明確に約束されました。

「天の父は、求める者に聖霊を与えてくださる。」(ルカ11:13)

「弟子の一人」が主イエスに、「主よ、ヨハネが弟子たちに教えたように、わたしたちにも祈りを教えてください」と願った時には、彼は主から「祈り」の模範を求めていたのかもしれません。しかし、これに応えて、主が、わたしたちに「主の祈り」をお与えくださったのは、主ご自身にとって特別なことです。それは、主がわたしたちに天の父なる神に「聖霊」を求めることをお赦しくださったことだからです。ただしそれは、主ご自身にとって、さらにわたしたちにとって、いかなることなのでしょうか。

それは、父なる神にとっては、御独り子キリストのいのちをわたしたちにお与えくださることをよしとされたということです。「聖霊」とは、御父との活ける交わりにある御子キリストのいのちそのものだからです。事実、そして確かに、御父は、「主の祈り」を祈るわたしたちに、御子キリストのいのちをくださいます。十字架においてただ一度。しかし、ミサのご聖体拝領の度ごとに。

ミサのご聖体拝領を目指して祈られる「主の祈り」。主イエスからいただいた「主の祈り」で、わたしたちは第一に、「父よ、御名が崇められますように。御国が来ますように」と、「神の国」を祈ります。続けて、「わたしたちに必要な糧」を、そして最後に、「わたしたちの罪の赦し」「罪の誘惑からの護り」を祈ります。

ここには、わたしたちが「神の子」として生かされるための大切なことの一切が祈られています。しかもそのすべてが、すでに主イエスの内に完全に成就しています。そして、その一切を、わたしたち自身の恵みとしてくださる方こそ「聖霊」です。その「聖霊」を求めて良い、と主は仰せです。それが「主の祈り」です。その「祈り」に応えて、主は「聖霊」「わたしたちが目で見、よく見て、手で触れる」ことができる(ヨハネの手紙1:1)「ご聖体」においてお与えくださいます。それがミサです。

マタイによる福音は、主イエスの「主の祈り」を、ご自身の福音宣教の始めの「山上の説教」の中心に伝え、その際、主は弟子たちに、「あなたがたの父は、願う前から、あなたがたに必要なものをご存知なのだ。だから、こう祈りなさい」と言われた上で、「主の祈り」をお与えくださいます。

「主の祈り」とは、「聖霊」を求める「祈り」であり、「わたしたちに必要なものすべてをご存知の父なる神の霊」である「聖霊」に、わたしたち自身を委ねさせていただく祈りです。そのわたしたちに、父なる神は、御子キリストご自身をお与えくださいました。十字架に至るまで。わたしたちにご自身のいのちをくださるために。

父と子と聖霊のみ名によって。  アーメン。