年間第19主日 (ルカ12章32-48節)
今日のイエス様のメッセージは「あなたがたも用意していなさい」という言葉です。イエス様は、当時話題になっていた事件を取り上げ、「あなた方は、最近強盗に這入られたあの家の主人のように、驚かされないように注意しなさい」と、ご自身が予知なさった大惨事の警告をなさったのだ・・・と神学者は言います。
イエス様の時代、ユダヤ人はローマの圧政に苦しみながらも、のほほんとした毎日を送っていました。そのユダヤ人を前にしてイエス様は福音を述べ伝えながら、強い言葉で、迫り来る苦難の日に備えるように、たとえをもって語りかけたのです。 今日の福音はその語りかけの場面です。
西暦66年、ユダヤ人はローマ帝国に反乱を起こしました。(ユダヤ戦争)そして、4年後の70年、ローマ軍はエルサレムの大部分と神殿を占領し、破壊しました。この時、多くのユダヤ人が殺され、また奴隷となりましたが、予知なさった大惨事とは、この「エルサレムの滅亡と神殿の崩壊」と言う出来事です。
ルカによる福音書では21章で語られるのですが、マタイによる福音書ではでは泥棒の例えの前に、エルサレム滅亡の予言が語られています。
イエス様はその危機的状況に、人々の目を開かせようとします。盗賊のように、予期せぬ洪水のように、天変地異のように、過酷な恐ろしいことが起きようとしている。準備しなさい、もうすぐ手遅れになる・・・と。
ルカは伝えられてきたイエスの語録集(Q資料)を紐解きながら、そこに自分の体験を重ね合わせて福音を編集しています。 ルカがペンをとったとき、エルサレムの滅亡は現実となっていましたが、まだキリストの再臨の時は来ていませんでした。でも近いだろうと思われていました。そこで、イエス様のお話を現実の共同体に当てはめて説明しました。
ペトロの「この話はみんなのためですか、それとも私たちのためですか」と言う質問に、イエス様が、「忠実で賢い管理人のたとえ」を語ったところが、「あなた方に対して語ったのだ」というイエス様の答えになっています。
イエス様が21章で語る「終末の徴」「時のしるし」を私達はどこに見ればよいのでしょうか。
新型コロナウイルスのパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻、WHOが警告を発しているサル痘、地球温暖化、異常気象、成層圏のオゾン層の破壊、極地の氷の減少、過剰な開墾や伐採、放牧による砂漠化など、「時のしるし」は沢山あります。
私たちはあまりにもぬるま湯のような今の現状になれてしまっています。
イエス様の今日の言葉は予言です。エルサレムの神殿は崩壊しました。ルカはそのことを知っていました。でも、世の終わりではありませんでした。
しかし21世紀の今こそ、しっかりと受け止めなければなりません。
このホミリアを書きながら、慄いています。このままでは間もなく地球の終わりが来るのではないかと。今日、明日、それが来てもおかしくない所に私たちは立っています。
世界の人口の8人に1人が飢えているのに、食用に生産された食料の3分の1が捨てられています。日本のテレビでは食レポ番組や食べ放題、大食いの番組があふれています。そして賞味期限の過ぎた食べ物の大量廃棄。フードロス。
そしてこのフードロスが与える影響の一つとして、地球環境への負荷が挙げられています。世界の温室効果ガスの8~10%がフードロスによって排出されているといわれています。どこか狂っているとしか言い様がありません。
終末時計・・という言葉を聞いたことがあると思いますが、どんな時計ですか?
アメリカ合衆国の雑誌「原子力科学者会報」の表紙絵として使われている時計で、時計の45分から正時までの部分を切り出した絵で表されています。
核戦争などによる人類の絶滅を『午前0時』になぞらえ、その終末までの時間を「0時まであと何分」という形で象徴的に示す時計です。
75年前の1947年に発表され残り7分から始まりましたが、冷戦終結後は17分前まで戻されました。しかしここ3年は100秒前のままです。2022年現在は1月21日に発表され、依然として「100秒前」となっています。終末の時は迫っているという認識です。
昨日から日本の教会は、平和のために力を尽くす10日間に入りました。教区としての特別な取り組みは聞いていませんが、私たちは今日の福音を通して、主ご自身から直接、すみやかに、平和について考え、それを行動に移すことを求められていると思います。